小さな旅|めろんそーだ
せっかく長崎に住んでいるというのに、観光名所を訪ねたことは一度もなかった。たびたび来る修学旅行生の背中を見送りながら、彼らは一体どこから来たのかと考える。「京都から来ましたぁ~」 男子高生が売店で元気よく挨拶をしていた...
せっかく長崎に住んでいるというのに、観光名所を訪ねたことは一度もなかった。たびたび来る修学旅行生の背中を見送りながら、彼らは一体どこから来たのかと考える。「京都から来ましたぁ~」 男子高生が売店で元気よく挨拶をしていた...
近所の駄菓子屋に変なお菓子が増えていた。 チロルチョコと似たパッケージで、包み紙には「でんしゃ」と書かれてある。「おばあちゃん、これは?」「チロルチョコさね」「ふぅん」 何だかよく分からなかったけど、いつもの10円の安...
終点の中央橋から徒歩で十分。路地裏という路地裏を抜け、道かどうかも怪しい道を歩いてゆくと、暗がりの中にポツンと灯りが見えてくる。 午後九時の『路地美術館』。スマートフォンのライトを頼りに扉の前まで行くと、自動で開き戸が...
海沿いを歩いていると、不意に大きな影が海面に映し出された。 くおー、くおー、という声とも音とも判らぬものが響き、突然噴水が湧き上がる。映像や本でだけの関わりだった「それ」を間近にした私は、気が付くと「おかあさーん!」と...
「長崎を馬鈴薯大国にしよう」 そんな一言で始まった当プロジェクトから、見るも無惨なゲテモノが発明されたのは言うまでもない。 発案者は、近々農家を継ぐ予定の若者だ。年々若者が県外に流れてゆく様に終止符を打ちたいと、無い...
不法入国だとかで、遠い蝦夷地からひとりの青年が送還されてきた。 ラナルドという名前らしい。が、それ以上は分からない。 俺は俺で、突然幕府の役人から呼び出されて、説明の無いまま聖福寺に連行されていた。表を通り、大悲庵へ向...